市街地再生試案
■新たなる都市機能の創出
 
『市』機能の復活
 失われた台所機能を取り戻すことが中心市街地の活性化を取り戻
すことの他ならない。つまり、生鮮食料品(野菜、魚、肉)を販売
する店舗を中心に商店街を機能させることが活性化の基本と言える
のです。衣食住の中で、食は毎日、欠かせないもっとも大切なもの
である。商店街おいてもっとも頻繁に買い物をするのは洋服でもな
く電化製品でもない。ましては車や貴金属のような高価なものは数
年に一度買えれば良い方である。このように毎日のように買わなけ
ればならない商品が街の活性化やにぎわいをつくる中心的な役割を
果たしているのであるから、新鮮な食料品を販売する『市』機能を
復活させることがいかに大切であるがご理解できるのではなかろう
か。
■観光都市における商店街づくり

○観光地と市街地をつなぐ
 串間市の観光は都井岬と幸島に代表されと言っても過言ではな
い。年間約30万人ほどの観光客が訪れているがそのほとんどが中心
市街地を素通りしている。これまでに観光客を引き止める対策がさ
れていただろうか。観光客の一部を中心市街地に引き止める対策と
して、串間の歴史、文化を見せる資料館や美術館などの整備を図る
と共に地場産品などを販売する施設の整備が必要である。その一つ
として道の駅的な施設を中心市街地に設けるたり、旧吉松邸を見学
させる方法などが考えられるのではなかろうか。

○通りに愛称名を!
 欧米の街を訪れると分かるようにほとんどの道路に愛称名(〜ス
トリート)が付けられている。親しみやすくかつ街が大変わかりや
すい。しかし、串間の街には国道〜号線、県道〜号線はあるもの
の、何ひとつ通り名(愛称名)がつけられていない。特に観光地で
ある以上、観光地に相応しいイメージの愛称名をつけることが大切
である。

<例>
 岬通り/ソテツ通り/楠通り/カンナ通り/山桜通り/シティ
モール/寿通り/ヤングストリート/親不孝通り/アートストリー
ト/アクティブストリート/文化通り/勿体森通り/天神通り/本
町通り/泉町通り/メジロ通り/いやし通り他

○魅力ある道標づくり
 地元の人は道を知り尽くしているので道案内は必要ないかも知れ
ないが、観光客においては道案内は大変便利でなくてはならない標
識である。道に迷うことなくスムーズに目的地に行けると共に地域
名を知ることができるので大変有り難い。しかし、案内標識が粗大
ゴミになっては台なしである。観光地に相応しい魅力ある標識、道
標であって欲しい。また風景に溶け込み記念撮影の背景になるよう
なデザインが望まれます。

○人に優しいサイン
 商店街の景観を壊している原因の一つに、看板の乱立が挙げられ
ます。特に派手な看板、大きすぎる看板、デザインの陳腐な看板、
汚い看板などです。このような看板類は、材料もプラスチック製の
ものやペンキで無造作に描かれて、どれもが個性がなく魅力に欠け
るものです。目立つことのみを固執するのは、車社会に意識した目
立てば良いだけのデザインの果であろうか?
 本来、看板は目立つようにつくるのでなく、情報の発信を最優先
し、個性的で商品を思い浮かべさせるようなイメージでつくり、話
題性を高めることが大切です。
○街を公園に!
 緑の役割は、空気を浄化させ新鮮な酸素を供給するだけでなく、
夏の強い日ざしを和らげ、木陰をつくる。木陰は休息できる空間や
涼しさを醸し出し、潤いの空間を創出する。四季を通して街中に花
が咲き、実がなり、紅葉しる空間は小鳥や虫たちが集まり、にぎわ
いの空間を創出してくれるのです。
 ただ闇雲に何でも植えれば良いと言うものではなく、地域性や気
候風土に合った植栽でなければならないのです。四季を感じ、花が
咲き、実をつけるような樹種を選定する。さらに串間らしさとは何
か?テーマ性を見つけて植栽計画を行う。つまり、街全体が公園と
なるような風景づくりを行い、10年後、100年後を考えた観光都市
に相応しい植栽計画を行う。

■歩行者優先の街づくり

○人に優しい商店街づくり
 車中心の現代社会では人は道路の端に追いやられ実に身の狭い思
いをしながら歩いている状況である。商店街を人が多く歩くことで
にぎわいがあるのであって、車が頻繁に通っている状況をにぎわい
とは言えない。人が歩きやすい街並にして、魅力ある通りにするこ
と、そして安全に買い物ができることで商店街に、にぎわいを取り
もどすことができるのです。

○交通システムを見直す

1 商店街から車を排除!
 ヨーロッパのドイツ、スイス、フランスなどの多くの都市で車を
商店街から排除して、人優先の商店街にする街づくりが行われてい
る。その多くは半径300〜500メートルの中心部を車乗り入れ禁止
として人優先の商店街にしているのです。人優先の街であるため車
は歩く程度のスピードしか走れない。但し、緊急用や許可を持って
いる車両は入ることができるシステムである。従って、街なかは人
がのんびりと大手を振って、ゆったりと気分で買い物ができる。車
の騒音はなく人々の会話や音楽が聞こえる。このような街にするこ
とも十分可能性を持っている都市環境といえるのではなかろうか。
2 駐車システムを見直す
 中心部の道路は道幅を狭くして車を通りにくくし通行量を制限す
る。さらに、道脇を路上駐車帯として活用する。小さな商店におい
ては駐車場を持つ程のスペースを持てないことが多い。ちょっと立
ち寄る程度の駐車スペースがあるとお客にとって大変有り難い。歩
道と私有地を旨く利用した駐車スペースを確保することで、街並と
一体化した潤い空間と駐車スペースが確保できる。

○回遊性、迷路性のある商店街
 現在の商店街は道路沿いに張り付いた線的な商店街であると言え
る。線的な商店街でも何本かの線であれば面的な広がりのある商店
街になりボリュームが生まれるが、現在の商店街は回遊性も迷路性
もないのが現状と言える。商店街の魅力、街の魅力は、あちこち歩
き回ることのできる回遊性と路地の先に何があるかな?というよう
な期待感のある迷路性をつくる必要がある。

○魅力ある路地空間づくり
世界中で楽しい街、魅力ある街と言われるところには必ずと言って
も良いくらいワクワクする楽しい路地空間がある。幅は2〜3メー
トル前後の狭い路地ではあるが路面は石畳や砂利、タイル、土など
の自然の素材でしっかりとつくられ、歩いて楽しい空間である。路
地に面したショーウインドウや外壁の飾りなど道行く人の目を楽し
ませてくれるようなさり気ない仕掛けがさらなる魅力を生み出す。

■環境に優しい商店街づくり
○エコロジー商品の販売
 近年、化学薬品を使った農産加工品や水産加工品が反乱し、人の
健康に悪影響を及ぼしています。また、新鮮で安全と思われていた
農産物においても農薬や化学肥料などが多量に使われているので
す。それらを食した結果アレルギー体質の増加やこれまで経験した
ことのないような健康障害が増えてきたと思われます。
 将来の子供達の健康や安全性を考えると、今後農薬を使わない有
機農法で作られた野菜や食品を販売することを推進する必要があり
ます。更に、地元の生産者と提携を図り、新鮮で安心して食べられ
る品質のよい食材を提供することが大切なことではなかろうか。そ
して、生産者の顔が見える商売を進めることが消費者と生産者との
信頼感を増し、活力ある商店街ができていくのではなかろうか。
 つまり、『エコロジー商店街』づくりを進めていくことが重要な
テーマと言えます。

○地産地消の取組み
 これまでの生産地は売り手の規格に合わせた農産物・水産物等を
生産し、中央市場へと供給していた。本来、地元で品質の良い美味
しい食材を安く買うことができることがもっとも好ましいことであ
るが、現実的には規格外のものや品質の落ちるものが地元で消費さ
れるといったねじれたおかしな現象がおきているのではなかろう
か。
 ヨーロッパの地方都市において、地元の食材を使った店には町か
ら推奨されたロゴマークの入ったプレートを店先に表示することで
高い評価を受ける。
このように『目に見える』ような地産地消の推進が商店街の個性化
と独自性をアピールできるのではなかろうか。

○買い物カゴ持参の取組み
 過剰包装、ビニール、プラスチックのパックなどで家庭の中はゴ
ミの山と化しています。ゴミの分別化が始まり、ゴミの有料化が常
識になるにつれ、ゴミを出さない、作らないような取り組みが各地
で行われるようになってきた。
しかし、スーパーにおいてはパック詰めの商品が多くその上、ビ
ニール袋に入れるといった行為が頻繁に行われている現状である。
 先ずは、ゴミを出さない、ゴミを作らないためには、買い物カゴ
を持参し、ゴミを持ち帰らない取り組みに着手すべきであろう。特
に買い物カゴ持参のお客さまには、何かプラスするサービスや特典
を与えることを考えたらどうでしょう。
 住民参加で環境に優しいまちづくりに取り組むことで住民に支持
され親しまれる商店街となるのです。

○バラ売・秤売りの復活
 欧米に見られるバラ売・秤り売は実に合理的で消費者にとっても
大変有り難い販売方法である。小家族や一人暮らしにおいてはパッ
ク売り、セット売りは多過ぎて、結果的には食べ切れないし、食材
は廃棄処分となり無駄が多い。
 日本でも以前はバラ売・秤り売であったが、スーパーマーケット
の出現で売り手の都合の販売方法として定着し、現在のようなパッ
ク売り・セット売りの方法となってしまった。その結果、ゴミ問題
や農業の在り方までもが変わってしまったのです。
 これからは、消費者のニーズに合わせたバラ売・秤り売の販売方
法を積極的に進めることで、ムダ、無理を無くすことができるので
はなかろうか。

○リユース、リサイクルの推進
 ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、ビン、雑誌、生ゴミなど
のリユース、リサイクルを徹底し、環境に優しい商店街づくりに積
極的に取り組む。これらのにも特典を与え、買い物客の増加を図
る。地球環境に優しいまちづくりの推進をすることで、子供に対す
る環境教育や街づくりの意識の向上を図る。

○ユニバーサルデザインの推進
 障害者に優しいまちづくりが進められるなか、これまで街中にあ
る様々なバリアーを無くす事業が展開されてきた。しかし、近年は
もっと幅広い意味で誰もが住み易い街づくりの推進を図るためにユ
ニバーサルデザインと言う視点で街づくりが行われている。段差を
無くしたり、スロープ、手摺、押しボタン、色彩、サイズ、素材な
ど様々なことをそれぞれの人にとって便利で使い易いデザインや機
能が求められています。
 つまり子どもから高齢者、障害者まで誰でもが快適に暮らせるよ
うな街づくりを積極的に取組む。

2006.1.15up